J.F.クロー著、木村資生/太田朋子 訳の遺伝学の教科書として有名な本。メルカリで多く出回っていて手に入りやすいので買った。
古典遺伝学とか統計の話ばかりなのかなと身構えてたけど、91年改定版ということで分子の世界の話まで広範な話題についてわかりやすく解説されていた。読むのを優先して練習問題をスルーしてしまったが、練習問題が豊富なのでちゃんとやっておきたい(やらないパターン…)
中立説の木村とほぼ中立説の太田の訳書ということもあってか、分子進化の踏み込んだ解説は読み応えがあった。機能的に重要さが低いアミノ酸ほど進化速度が早いという観察から、アミノ酸に翻訳されない偽遺伝子や機能にいわゆる遊びができるような遺伝子重複などが進化にとって重要な役割を果たしているかもしれないという推測は納得できるものがあるし、近年のジャンク領域の様々な機能解明で徐々に裏も取れてきている印象がある。こうなると大野乾の本も読みたくなってきた。
現在の生物学は「ほげほげオミクス」を用いたシステム生物学全盛の時代なのだと思うが、古典遺伝学、分子遺伝学の流れで打ち立てられた仮説を検証して答え合わせをしているフェーズだと考えると、こういう歴史を外観できるような本を読んでおくと面白いかもしれない。