『細胞死・アポトーシス集中マスター』を読んだ

発生、免疫、神経系など、生き物の話を読むのにハマっているのですが、必ず登場するワードがアポトーシスです。単細胞生物から多細胞生物になって、色々な細胞がうまく協働して一つの個体として成立しているわけなので、正常ではなくなった細胞などを積極的に死なせる仕組みがあるらしい、というのがこの本を読む前の理解だったのですが、ここらへんでしっかり概念を押さえておきたいと思って例のごとくメルカリで500円で買いました。「はたらく細胞」は「明るいディストピア」と称されることもありますが、アポトーシスのような全体としてうまく機能するために個々の細胞をうまく死なせる必要不可欠な機構の存在を見ると感慨深くなります。

安心と信頼の羊土社さんということで、原付免許集中マスター的なノリで重要な知見を乱暴に投げ込んでくる感じです。ふむ、やはり多細胞生物はなんかいい感じに細胞死をプログラムしているっぽいな、とアポトーシスへの理解に圧倒的な成長がありました。今見てるアルファベットが一体何だったのか、遺伝子の名前のなのかタンパク質の名前なのかこんがらがりながら、騙し騙し読み進めました。

いつものことですがまとめられるほど理解してないので箇条書きで。

  • 用語整理
    • 形態学的な定義
      • アポトーシス:核や細胞質の収縮、アポトーシス小体の形成などを特徴とする細胞死
      • ネクローシス:核の消失などは見られない
    • プログラム細胞死の研究から分子機構
      • アポトーシス: カスパーゼ依存的なもの
      • ネクローシス: カスパーゼ非依存的なもの
  • アポトーシスの経路は複数ある
    • デスレセプター(Fas, TNFレセプター、TRAILレセプター等)
    • ストレス応答(MAPキナーゼ経路(p38, JNK))
    • ミトコンドリア(Bcl-2が局在)
  • カスパーゼカスケード
    • 上記の経路がイニシエーターカスパーゼ活性化→エフェクターカスパーゼ活性化→アポトーシス誘導
  • アポトーシスの機構は進化的に保存されているが、それぞれの分子によるカスパーゼ活性化制御機構は種によって異なっている
    • 線虫、ショウジョウバエ、ヒトで研究されている
    • 線虫C. elegansでは、発生過程で死ぬことがあらかじめ決定されている131個の細胞を持つ
    • 哺乳類では必ずしも決まっておらず、個々の細胞が状況に応じて生死を決定している点で決定的に異なる
      • 生存シグナルと細胞死シグナルのバランスによって決定する
      • 生存シグナルにはキナーゼ(AktやERK1/2)による伝達が重要な働き
    • 哺乳類ではミトコンドリアの重要性が提唱されているが、線虫やショジョウバエではその関与は未だ不明
  • 神経変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病)は異常タンパク質が蓄積するコンフォメーション病だとする考えが有力になってきている
    • 異常タンパク質蓄積から細胞死に至る経路の正確な理解が治療法開発に結びつくかもしれない
  • 生物すごい

線虫の細胞系譜で決定されたシンプルな細胞死から、ミトコンドリアが関与するより複雑な細胞死の制御への進化は特に興味深いです。多細胞生物の細胞間の協働の中で、ATP産生だけでなく死ぬべきときに死なせる役目も負うなどマルチに活躍するミトコンドリアさん、何も生み出さずに死ぬこともできない僕。頑張っていきましょう。

 

種延真之

発達をしくじって窮乏生活してるおじさんです。最近の興味はアニメ, 心理学, 進化関係のトピック(進化生物学, 進化心理学, evo-devo), たまに思いついたようにプログラミング勉強したりします(最近はNode.js)。メモ類は→Scrapbox