どうもたねのぶです。高木利弘さんのりんご革命塾というものに参加してまいりました。ジョブズやアップルの面白いエピソードだけにとどまらず、漫画家から出版関係の方まで多数いらしていて、現在の出版に関するお話まで発展し非情に面白いディスカッションが交わされていました(もちろん僕は聞き専である)。高木さんとはギークオフィス恵比寿の忘年会でお話させて頂いて、お声までかけていただいたのでホイホイ参加させていただきました!週末の18:30からの開催でしたので、無職の僕は悠々と最前席を確保したのでした。
塾頭の高木利弘さんは日本初のマッキントッシュ専門誌のMACワールド日本語版やMACLIFEなどの古参MAC専門誌の編集長をされていた自他共認めるジョブズ研究者です。スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツと同い年で、ご自身がおっしゃられたようにまさに世界が変革されていくのを肌で感じていった世代なのだと思います。
りんご革命塾という名前の由来は江戸時代後期の大阪の適塾からきています。幕末のパラダイムシフトの時代にあった蘭学を学ぶ塾ですが、今起きている変革は当時以上のものであり、今まさに世界を変えているスティーブ・ジョブズとアップルについて勉強しようというものです。
コンピュータといえば巨大な機械のことを指していた時代で、世界最初のパーソナルコンピュータと言われているAltair8800は「ミニコンピュータ」、PET2001は「マイクロコンピュータ」、TRS-80は「リトルコンピュータ」と謳っているのに対し、Apple IIは「パーソナル」というコンセプトを持っていました。コンピュータが専門の技術者やマニア向けでなく普通の個人が使う時代というものをジョブズはビジョンとして持っていたということですね。
今日のインターネットの生みの親はティム・バーナーズ=リーという方ですが、彼が作り上げたWWWの原型はジョブズがAppleを追い出された後に開発したNeXTというワークステーションで作られたものです。NEXTSTEPという優れたオブジェクト指向のOSにティム・バーナーズ=リーは大いに助けられ、またこのOSが後のMac OS Xなどにつながっていきます。
そして、ここからは僕らの世代が肌で感じたiPodとiTunesストアによって人々の音楽スタイルは大きく変容した時代が来て、言うまでもなく現在はiPhone・iPadなどの登場でありとあらゆるところにコンピュータが介在するユビキタス社会へとシフトしていると言っていいでしょう。
一つのキーワードがユーザーエクスペリエンスで、ジョブズはソフトウェアからハードウェアまで一貫した製品を作ってそのユーザーエクスペリエンスにまで責任をもつと言っています。
iPhoneとAndroidの対比は、クローズドとオープンで語られることも多いですが「統合的 vs 断片的」とジョブズが言っています。AndroidはUXをユーザーに委ねている部分があって、iPhoneはすべてのユーザーに同じUXを保証していると言えます。それだけジョブズがUXにこだわっているということですね。
テクノロジーは文字通り「技術」ですが、リベラルアーツは辞書通りの「教養」ではないと高木さんは言います。ここでいうリベラルアーツとは「あらゆる前提を排し、一切を自分で判断し、行動せよ」という禅の考えに通じるもので、「自由な諸芸術」と言ったほうが意味は通るだろうと。高木さんは「アートとコンピュータを融合した」と表現されていますがまさにその通りで、Apple製品が外見だけでなく中の基板設計にまで美しさを追求しているのは有名な話ですね。
ジョブズは一言で言うと職人で、デザインは魂を吹き込むことだと言っています。生まれたばかりの仔牛が立ち上がるのを見て、歩くことをもともと組み込まれていることに少年ジョブズが感動するエピソードがあります。コンピュータはこの仔牛のような「生き物」でなくてはならない。したがって、ソフトウェアとハードウェアは一体でなければならない。基板設計まで完璧でなくてはならない。コンピュータに魂をふきこんで生き物を作りたかったジョブズのこだわりです。
ジョブズが捨てた子の名前を冠した「Lisa」や、初代マッキントッシュのお披露目の時のマッキントッシュのスピーチなどはこうした背景があるんですね。
あまりにも有名な、ジョブズが人生で学んだ3つのポイントについて語っている素晴らしいスピーチです。
一つの例として、ジョブズの出生、リード大学を中退してカリグラフィの授業を受けたこと、そして美しいタイポグラフィを持ったマッキントッシュコンピュータへとつながっていく。ジョブズ自身は先々のことは決して考えていなかった点と点が、振り返るとつながったという話です。
ジョブズは強調して、先を読んで点と点を繋ぐことは出来ず、後から振り返って初めて線になると言っています。計算ではなく、自分の勇気や運命やカルマ、何でもいいから信じなければならない。それが自分の心に従う自信につながると言っています。
ウォズニアックと二人ではじめたガレージカンパニーが20億ドルの会社に急成長したものの、アップルを追われ、喪失感に苛まれるジョブズ。しかし会社を発展させる重圧から解き放たれ、再び挑戦者になる身軽さに変わったと言っています。
実際、NeXTやPixerなどを立ち上げ、妻となるローレンさんとも出会います。ピクサーは「トイ・ストーリー」を作り世界有数のアニメ会社となり、NeXTはアップルに買収され、ジョブズは再びアップルに戻ることになります。NeXTの技術はアップルの躍進に大いに役に立ち、そしてローレンさんと最高の家庭を築くことになります。ジョブズはこの時期を「人生で最も創造的な時期」と言っています。
ジョブズは私達に好きなことを見つけろ、見つからなければ探し続けろと言っています。最悪の出来事に見舞われても、信念を貫いて進み続けることが大事だとジョブズは語っています。
「もし今日が人生最後の日だったら」という問いをジョブズは33年間毎朝問い続けたと言います。ジョブズは「死」は生物の進化の担い手として生物最高の発明だと考えています。
死は平等で、自分が生きられる時間は限られています。他人の人生を生きるのではなく、自分の心の直感と勇気に従えとジョブズは自身の膵臓癌で生死を彷徨ったエピソードから語っています。
第1回だけでもかなりボリュームのある内容でした。他にもジョブズの生い立ちやエピソード、禅や日本との関係など、色々な角度からスティーブ・ジョブズという人間について知る事ができると思います。高木さんが熱く語るのもうなずけるくらいジョブズは面白いし、ライフスタイル
長くなりそうなので一旦切って、後編はいよいよ、ゲストの「はぁとふる売国奴」こと漫画家の田中圭一さんのお話を書きたいと思います。