『人を襲うクマ』を読んだ

読んだ理由

  • Kindleセール積読
  • クマが好き
  • クマこわい
  • でもやっぱりクマが好き

目次

  • 第一章 日高・カムイエクウチカウシ山のヒグマ襲撃事故
  • 第二章 インタビュー 地元猟師が語る、秩父のクマの今
  • 第三章 近年のクマ襲撃事故
  • 第四章 クマの生態と遭遇時の対処法 解説=山崎晃司

感想

怖い話をストレートに怖がれないほどには年をとってしまったので、引きこもり人生で恐怖感覚を得るためのコンテンツはもっぱら不気味な未解決事件とクマになってしまった。今住んでいるところもクマの生息域に人間が住まわせてもらっているような場所で、自宅周辺でのクマ目撃例も珍しくないような場所なので、かつてないくらいクマっている。普段からYoutubeでクマに追いかけられる動画を見たりしている。お気に入りはこれ。こわい。

1~3章のドキュメンタリーがめちゃくちゃ怖い。福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件はよく知っていたが、畳平駐車場襲撃事故の助けに入った人がツキノワグマの一撃で右目が落ちて重症を負ってしまう生々しい描写に特にやられた。ツキノワグマならワンチャン倒せるんじゃないかという希望を見事に打ち砕いてくれた。

東京農業大学の山崎晃司のクマの生態と行動に関する解説は勉強になった。雌ツキノワグマの着床遅延という戦略は面白い。哺乳動物が繁殖成功度を高めるために流産させる例はいくつか見てきたが、着床自体を遅らせるということも可能なのだなと思った。

ツキノワグマは「大量出没」と称される年が隔年ペースで続いている。里山の消失による森林化によってクマの分布域は広がっており、ヒトの生活圏とも隣接、重複していることと、推定個体数の増加、そして堅果類の豊凶を繰り返すパターンに関連すると思われるかなりの距離の探餌活動によって、豊富な食料源のある人里に繰り返し出没するようになるようだ。特に春の山菜取りと秋のきのこ狩りで人間が山に入ることは、まさに冬眠を挟んだクマが同じように餌を探し求める時期にその生活圏に飛び込むということなので、まあそうなってしまうよなという感じ。

クマとヒトの軋轢を減らすためには、里山の保全と森林化の阻止ということが一つのキーになってくると思うが、今現在の人口減少と都市部集中傾向を考えると、もののけ姫の逆パターンで中山間地域はヒトが森に敗北して森に呑まれていく運命になりそうだ。インフラ維持が大変なので、田舎からは人類撤退して都市部に集中したほうがよくね?という一見経済合理性に適っているかのように見える考えもあるかもしれないが、個体群密度が上がっていくと今度は寄生者が強い毒性を進化させる舞台が整えられることになるので、どっちにしても人類に未来はないエイリアンvsプレデター的な展開になってしまいそうな気もする

ツキノワグマの人身事故件数は、北海道のヒグマだけではなく、世界のクマ類からみても非常に高いようだ。クマ類の人身事故のほとんどはクマの防御的な攻撃なので、より体の小さなツキノワグマが攻撃をより誘発している可能性がある。もう一つ興味深いのはツキノワグマがそもそも攻撃性の高い性格をしているという仮説で、ツキノワグマと近縁のアメリカクロクマは、研究者がアメリカクロクマにより攻撃されることはほとんどなく、著者を含めたツキノワグマの研究者はツキノワグマからしばしば攻撃を受けているらしい。攻撃性が本当に高いのか今後の研究に期待。

日本クマネットワークや知床財団の活動にも触れられていてよかった。北海道では遺伝分析によるクマ個体の加害グマの駆除が進んでいるが、本州では人身事故への対応は課題があるようだ。秋田県鹿角市の4件の食害事故では加害グマの遺留物を採取していなかったので、人間で言うところの未解決事件のような状況になっている。獣害が今後減っていくという楽観的な状況ではないので、クマの事故の対応も求められていきそう。

クマについて考えるのはいつでも至福の時間だ。何回鉢合わせた場面をシミュレーションしても一定確率で食べられてしまうので、もう絶対に家から出ないぞという結論になってしまうけど。九州では絶滅して、四国では絶滅の危機に瀕しているような状況なので、本州のクマももしかたらオオカミのようにふっといなくなってしまう未来もあるかもしれない。諸々のことがいい感じに解消してうまいこと共存していけたらよいなーとこの上なく他人事だけどそう思う。あと関係ないけどユリ熊嵐をまた見たくなった。

 

種延真之

発達をしくじって窮乏生活してるおじさんです。最近の興味はアニメ, 心理学, 進化関係のトピック(進化生物学, 進化心理学, evo-devo), たまに思いついたようにプログラミング勉強したりします(最近はNode.js)。メモ類は→Scrapbox

 

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