視力落ちてメガネの三城でメガネ作ったあとで視力が回復して実家にメガネ置いてるたねのぶです。多分職場のPC作業で目が疲れてただけなんでしょうね。ただ回復したと言っても遠くの文字はぼやけたりで年々視力は下がってる気がします。目がいいことだけが取り柄だったんですが。さて、りんご革命塾第2回のゲストはパリミキ・メガネの三城でお馴染みの三城ホールディングスの河村和典さんです。パリミキやメガネの三城でのiPad導入やクラウドファンディングで600万以上の資金を得て話題の「雰囲気メガネ」の開発などで有名な方です。
メガネの三城、パリミキでお馴染みのメガネ屋さんです。
アラン・ケイのダイナブック構想に大きく影響を受け、実際に子供から年配の方まで誰でも操作できるデバイスとして登場したのがiPadです。河村さんは「メガネ屋は小売業ではなく接客業」とおっしゃっていて、僕が実際メガネの三城でメガネを作った時もフレーム選びや視力検査をしたりと現物を受け取るまで結構時間がかかったので、他の小売よりもホスピタリティが重視されるんだなとは思いました。
社内のシステムが古くなってくるにつれて、どうせシステムを変えるならフロントエンドの全てをiPadにするくらいダイナミックにやろうと思ったそうです。実際、レジを廃止してiPadにPOSシステムを持たせるようにしているそうです。これってかなりすごいことで、iPadにレジ機能からカタログ、過去の販売履歴やデータなどがすぐに参照できるようになるってことはかなり先進的ですよね。
待ち時間がかかるメガネ屋さんですから、極端な話iPadがあるだけでも時間が潰せそうですし全然話が違ってきますよね。タブレット端末の得意とするところのカタログなどの運用もそうですが、一番おもしろかった話はカメラ機能が大活躍しているという話です。人志松本の許せない話っていう番組で東京03の角田さんがメガネ屋さんでメガネを掛けても掛けた自分が見えない!!という視力の悪い人にしかわからない話をしていました。三城ホールディングスも当然カメラとモニターを使っていたのですが、まず撮影してデータをPCに移してそれをモニターに表示するという煩雑な作業と、大掛かりなレンズを向けられて大きなモニターで表示するっていうことはちょっと恥ずかしいし客としても気を使ってしまう。でもiPadなら撮影してすぐ表示するだけだし、不思議なものでスマホやタブレットのカメラだとカメラの緊張感もなく自然な笑顔が撮れるそうです。本当に一台で何でもやってしまう優秀なデバイスですね。
当初、三城ホールディングスはトップダウンでiPadを配布したが全く浸透しなかったそうです。そこで河村さんが行ったのは「本当に使ってみたい」という人を社内で募集してエバンジェリストとして活用してもらうという方法でした。この時、あえてIT担当者は候補から外したそうです。単なるガジェット好きではなく、本当にiPadが好きな人が使えば周囲も使いたくなり、自然と浸透するだろうと考えたそうです。
iPadを支給されたエバンジェリストは各自のアイディアや試みなどをFacebookグループに共有すること以外は、使い方の指示や報告書の提出は一切せず、店内だけでなく自宅でも使用できるようにするなど、徹底的に自由に使えるようにしたそうです。確かに会社だけで使えてもアイディアも得にくいですよね。
エバンジェリストは最初100人募集して、河村さんがつきっきりでサポートしたそうです。次に追加で100人を募集し、200人に。そして最終募集で100人を募集して、実際には170人近く集まったらしいのですが、これは最初の200人のエバンジェリストがサポートする体制ができたそうです。河村さんはエバンジェリスト達をサポートしましたが、マニュアルは作りませんでした。実際にマニュアルを作成したのはエバンジェリスト達で、自分たちで必要だから作成したそうです。エキスパートではなくエバンジェリストである重要性はここで、エキスパートを育てても結局エキスパートしかやらないので、エバンジェリスト(伝道師)である必要があるという話でした。「(専門家ではない)その他の人々のために」というジョブズの精神がそのまま現れていますよね。
三城の人事がエバンジェリストをチェックしたところ、エバンジェリストのいる店は業績が伸びているところが多かったそうです。河村さんの分析では、エバンジェリスト達のアイディアが活きていて行って楽しい店になっていること、何より楽しく仕事ができているからではないかということでした。国内の最初期のiPad導入事例として紹介されることの多い三城ホールディングスですが、iPadを起点にした河村さんの行った社内コミュニケーションの仕組み作りがとても面白いですね。
iOSと連携し、光や音で様々な情報を伝えてくれるメガネです。GoogleGlassなどの「メガネ型のウェアラブルデバイス」が多く登場する中、メガネ屋が作る「ウェアラブルデバイスの機能を持ったメガネ」と言っていいでしょう。機能やデザインもさることながら、クラウドファンディングで資金を集めたことも大いに注目されています。
河村さんが雰囲気メガネの販売を考えた時、社内からは売れるわけがないとの評価だったそうです。この社内の評価を覆すために説得をするよりは外部の評価を得たほうが早いと考え、河村さんはあえてパリミキを全く知らないバルセロナのモバイル・ワールド・コングレスで雰囲気メガネを発表しました。バルセロナでの発表から大きな反響があり、早く使ってみたいとの声が多く、クラウドファンディングによるプロジェクトが開始されたそうです。当初300万を目標金額に設定したものの、早々に300万以上が集まってしまったため、600万に拡大し、最終的に680万円を達成しています。
クラウドファンディングはこれまで資金力に乏しい個人や団体のスタートアップとして活用されていましたが、今回のように企業がクラウドファンディングによってプロジェクトを始動したのはおそらく国内では初めてです。企業がクラウドファンディングを利用するメリットは、どれほど需要があるのかというのが一目で分かるので、マーケティング調査にもなりますし、話題性もあるので宣伝にもなります。事実、雰囲気メガネは宣伝広告費には一切お金をかけていないようです。「自分たちは電子回路を扱えないがアイデアでモノが作れる」と河村さんはおっしゃっていて、企業がネットワークを使って水平的な協力でモノを作り、クラウドファンディングを利用して使ってみたい人に使ってもらってそれを製品に活かすということができる時代になってきたのだと思います。
GoogleGlassなどのメガネ型デバイスと違って、雰囲気メガネは言ってしまえば「光るだけ」「鳴るだけ」です。開発者用のSDKも公開されており、照度センサーや加速度センサーも搭載されているのでアイディア次第で面白い使い方がどんどん出てくると思います。「本当に使ってみたい人に使ってもらうことが大事」と今回の雰囲気メガネのプロジェクトに関して河村さんがおっしゃっていました。先のiPad導入の際にも河村さんが最重要視していたことです。おそらく、お客さんに雰囲気メガネのエバンジェリストになってもらおうとしているのではないのでしょうか。
1/26追記:iPad導入も雰囲気メガネもプロジェクトチームで取り組んだことであり、私一人で行ったわけではないですよと河村さんからご指摘をいただきました。Macに精通した河村さんをはじめとするチーム全員の力で推し進められてきたプロジェクトだったことを重ねて申し上げておきます。ご指摘ありがとうございました。